小沢健二の名曲「ラブリー」。
1994年11月23日にリリースされたオザケンの代表曲でありながら、いわゆる『渋谷系』と呼ばれる音楽の代表曲でもあります。
世代も時代も超えて、日本のポップスを愛する人々から圧倒的な支持を受け続ける「ラブリー」。
この曲に、一体どのような音楽のマジックが秘められているのでしょうか。
今回はその「ラブリー」の歌詞やコードを解き明かしてみると共に、多くのアーティストにカバーされ歌い継がれる理由について考えてみたいと思います!
「ラブリー」にまつわる話
カバーするアーティストの多さ
この「ラブリー」は、鈴木雅之や倖田來未にカバーされているのはご存知でしょうか。
多くの音楽アーティストを虜にして止まない『ラブリー』だと実感しますね。
また2017年には、小沢健二自身と満島ひかりが「ラブリー」のセッションを披露しています。
「ラブリー」には元ネタがある?
まず最初に、いきなりですが「ラブリー」に元ネタがあると言われていることはご存知でしょうか?
実はかなり有名な話であり、小沢健二が音楽業界の表舞台から姿を消した理由は、小沢健二のあらゆる楽曲に元ネタがあることが暴かれ、一部の音楽ファンから非難されてしまったことが原因とも言われています。
近年では楽曲に元ネタがあるということは特に珍しいことではありませんが、当時はかなりの衝撃が走ったようです。
「ラブリー」の元ネタと言われる楽曲
そして、元ネタと言われている楽曲がこちら、Betty Wright の「Clean Up Woman」です。
オザケンの『ラブリー』
最初のイントロの一音目から、誰が聞いても元ネタと分かってしまう程、全く同じではないでしょうか。
ギターのリフなども同じように聴こえます。
ただ歌メロや楽器の音色が違うので、全く雰囲気が別ものの仕上がりです!
素人耳で聴き比べてみると、「ラブリー」の方がゴージャスで高揚感があるように感じますね。
「ラブリー」の歌詞の世界をさぐる
単純なようで奥の深い内容
次に、「ラブリー」の歌詞について考えてみたいと思います。
簡単に解釈してしまうと『歌の主人公が女性と恋に落ち、人生が華やかになった』と、このように読みとることが出来ます。
しかしこの歌詞の、「LIFE IS COME’IN BACK」という言葉が、もっとスケールの大きな意味をもたらしているような気がしてならないのです。
歌の主人公の人生は女性と出会うまで、酷く低迷してしまっていたのではないか、ということが予想されます。
つまり誰かと恋落ちるということは、低迷した人生に楽しみや喜びを取り戻し、それが末永く続いていくよう努力していけるというような、もっとスケールの大きな内容が「ラブリー」の歌詞には込められているのではないでしょうか。
《追記》
2018年2月のMステで、24年ぶりに「ラブリー」を披露した小沢健二さん。
「実はこの「ラブリー」は、もの凄く寂しい夜に書いた曲です」と語っていました。
「新しい恋が始まれば、『長く深い夜』を超えていける」、そんな希望もこもった歌詞なのかもしれませんね。
ライブツアー『ひふみよ』にて変えられた歌詞
それでは、この「ラブリー」の歌詞に登場する『夢で見た彼女』という女性、この女性とは一体何を表現しているのかを考えていきたいと思います。
そもそも、『楽曲に元ネタがある』ということ、皆さんはどう思いますか。
「パクリだなんて卑怯だ」
と思う方もおられると思いますが、筆者は「自分の作品に元ネタを用いるなんて、よっぽどその楽曲やアーティストのことが好きでたまらないのだろう」と、可愛いらしく思えるのです。
小沢健二が意図的に元ネタを用いたのであれば、Betty Wright の「Clean Up Woman」は、小沢健二の人生を大きく左右するような影響を与えたと言えるでしょう。
筆者は、歌詞の中の『夢で見た彼女』とは小沢健二にとってBetty Wright の「Clean Up Woman」だったのではないかと感じてやみません。
2010年に行われた小沢健二のライブツアー『ひふみよ』では、このように歌詞が変わり歌われています。
『LIFE IS COME’IN BACK』
→ 『感じたかった』
『CAN’T YOU SEE THE WAY ? IT’S A !』
→ 『完璧な絵に似た』
小沢健二にとって完璧な絵のようだった「Clean Up Woman」。
その楽曲から作られた「ラブリー」は大ヒットとなり、変化した時代でもなおあらゆるアーティストにあらゆる場面で歌われている。
「ラブリー」という楽曲の始まりから今に至るまでの、その音と歴史の全てが歌詞にあたるように見えてくるのです。
とんでもなく素晴らしい楽曲と出合った時、その気持ちをどうしようか、と思うほどハッピーになることがありますよね。
そんな気持ちを表現した高揚感溢れる作品が「ラブリー」であり、時代を超えて歌い継がれていくようにという願いが詞の中に込められているのではないでしょうか。
「ラブリー」のギターコード
それでは、「ラブリー」のギターコードを見てみましょう。
「ラブリー」は、コードがとても簡単です。
1つのコード上で歌メロがキャッチーによく展開しているので、とても弾き語りしやすく歌うことが楽しめるのです。
それでいてキャッチーな展開でも歌のメロディーがコードに縛られていないので、歌いまわしもアレンジしやすいです。
また、自分の好きなだけ何度も繰り返しやすい、絶妙な構成とメロディーのバランスなのではないでしょうか。
しかし女性が歌うには、少しキーが低いような気がしますね。
そんな時は、より簡単に押さえられる別のコードを使うことで、キーを2音上げることが出来ます。
この高さですと、女性も歌いやすいのではないでしょうか 😉 。
このような、ギター一本で出来る弾き語りのやりやすさが、男女問わずたくさんの人に歌われることの理由だとも考えられます。
天気の悪く滅入ってしまいそうな日なんかは、みんなで合唱すると気分も晴れそうです。
まとめ
近年では、楽曲に元ネタがあるということは、特に珍しいことではありません。
小沢健二は音楽そのものだけでなく、楽曲の制作の方法まで時代を先回りしていた人とも言えます。
有名なミュージシャンの「ラブリー」のカバーは、大々的に取り上げられた数が少ないながら、小沢健二に影響を受け憧れを抱く人々は、おそらく数多く潜んでいるはずです。
小沢健二のように、楽曲の元ネタは調べるよりも早く暴かれ、パクリ疑惑なんかもかけられてしまう時代なのですから。
筆者の歌詞の見解が当たらずともかする程度触れていれば、今の時代で「ラブリー」を歌う人々は、当時では非難されてしまった小沢健二の作曲法に賞賛を唱えているように見えてきます。
発表された楽曲に対し、意見を述べられるリスナーだけでなく、楽曲そのものを作り出したアーティストへ寄せた、少しスケールの大きな考え方ともなりましたが、いかがだったでしょうか。
人だけでなくあらゆるもの、あらゆる楽曲に恋をし、そんな時に「ラブリー」を口ずさんでみると、日々が少しだけ楽しくなるような、そんな気がするのです。