東京・池上本門寺にて、2017年9月1日(金)より3日間に渡り行われた野外フェス「Slow LIVE 2017」。
その3日目に出演した空気公団は、楽曲のクオリティの高さ、メンバーの演奏力の安定感、そしてボーカルである山崎ゆかりの声の透明度が、どの出演者よりもひときわ目立っていました。
野外フェスという特殊な環境であっても、彼らはマイペースでおっとりとした雰囲気でありつつ、ミュージシャンの独特なオーラをかもし出していました。
現在の日本では類を見るようで見ない、芸術家の側面をも見せる空気公団。
今回は彼らの「Slow LIVE 2017」でのライブの感想を、セットリストに基づいた楽曲の紹介もしばし織り交ぜながら綴っていきたいと思います。
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空気公団というバンドとSlow LIVE 2017 のセットリスト
空気公団とは
まず最初に、空気公団についてお話しましょう。
1997年に結成し、現在は山崎ゆかり(ボーカル)、戸川由幸(ギター・ベース)、窪田渡(キーボード)の3人で活動しています。
楽曲の作詞作曲は山崎ゆかりが手がけており、彼女がバンドの代表者として、空気公団を引っ張ってきました。
日常語の歌詞、また、やわらかな詞に見え隠れする些細な哲学に、細やかに織り込まれた演奏によるアレンジが特徴的で、またポップ・ロックやポップスが中心となったサウンドが、彼らの音楽であります。
音源制作の他、映像を取り入れたライブ、また、あらゆる芸術家とのコラボレーションイベントなども行っています。
そして音楽活動だけでなく、現在は絵本や映像などの制作も行っており、ミュージシャンの枠に囚われることのない芸術活動も行っているのです。
Slow LIVE 2017 セットリスト
さて、こちらが空気公団の Slow LIVE 2017 のセットリストです。
フェスなので曲数は少ないですが、昔のアルバムから新しいアルバムまでの楽曲を披露してくれました。
- あなたはわたし
- ペン
- 天空橋に
- 出発
- 青い花
- 白いリボン
- なんとなく今日の為に
- 旅をしませんか
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空気公団ライブの様子と楽曲解説
疲れた空気感に染み込む細やかなサウンド
それでは、ライブの様子をお話したいと思います。
low LIVE も3日目であり、3日目から参加したフレッシュな音楽ファンも居れば、3日間連続で参加し、疲れ始めてきたような音楽ファンもちらりほらりと現れてきました。
空気公団の出演時間は16時半で、少し眠たくなってくるような、涼しくなり始める時間でもあります。
ステージの奥からは生ピアノが登場し、静かに空気公団のメンバーが姿を現しました。
2017年で結成20周年となる彼らは、この日、全員白いコーデに身を包んでいました。
準備が整うと、1曲目の「あなたはわたし」が始まります。
プツプツとしたリフが何とも不思議なベースから始まる楽曲です。
そのベースに、舞い踊るようなピアノが重なります。会場の空気が静まりかえっていき、ステージは山崎ゆかりの歌声で、空気公団の雰囲気に染まります。
バンドの生演奏に、少しだけエレクトロニカのような錯覚をするこの楽曲は、ポストロックのようであり、とてもリズミカルであります。
見ている人の、始まっていく空気公団のライブへの期待を、テンポよく躍らせてくれるのでした。
2曲目は、和テイストな美しいメロディーをのせるロックなサウンドの「ペン」です。
意外にもやかましいような楽曲のある空気公団。この楽曲にも、彼らのオルタナティブな要素が感じられます。
眠たくなるような時刻に、観客の背筋を伸ばしてくれるようでした。
グルービーな演奏が抜群に上手く、カッコイイです。
3曲目は、神秘的な音と歌の世界が広がる「天空橋に」です。
野外で聴くこの楽曲は、鳥肌が立つほど神々しいものでした。
3日連続で Slow LIVE に訪れている人にとっては、様々なアーティストから受けた、音楽による良い疲れに染み込む1曲となったでしょう。
4曲目の「出発」は、シンプルでありながら音遊びの要素のある楽曲です。
サウンドに乗る、語りのような山崎ゆかりの歌は、透き通っていて野外の音と混ざり消えそうであるも、しっかりと観客の耳に響くのでした。
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景色と音楽が共存していた時間
そして、後半へと突入します。
山崎ゆかりの歌声にあまりにも透明感がありすぎて、風に連れ去られては小さく聴こえ、また、風に運ばれてきては大きく聴こえる…そんな野外ライブならではの面白さがありました。
安定した演奏の上を、自由気ままに走ってゆく生きた歌声のようです。
5曲目の「青い花」は、筆者が聞けることを願ってやまなかった楽曲です。
優しく高揚感もあるこの楽曲は、風に吹かれ、ハラハラと落ちる筆者の視界の木の葉を、一層綺麗に彩ってくれるのでした。
とても短く、コンパクトな楽曲ですが、本当に一輪の青い花が静かに開いていくような美しい楽曲であります。
6曲目の「白いリボン」は、クリスマスソングのようにガチャガチャと楽しく鳴り、夕暮れを目前にした空に、一足早く光を灯し始めそうでした。
7曲目の「なんとなく今日の為に」は、ゆったりとした楽曲の中、お茶を飲み想いにふける1人の人物の姿が浮かぶようです。
山崎ゆかりの優しくも芯のある歌声がとても考え深い歌詞を通して、観客一人一人に語りかけるようでした。
8曲目の「旅をしませんか」は、2015年5月にリメイク版が限定配信された楽曲です。
もともと2003年発売のアルバム「こども」に収録されている楽曲であります。
重ったるく心地よいテンポのドラムと、一日の幕開けを感じさせるようなピアノの始まりが印象的な楽曲です。
空気公団の最後の楽曲が、この「旅をしませんか」だったことが素敵でした。
この楽曲で終わってしまう彼らのステージですが、’みなさん、まだまだ続く音楽の旅を楽しんでいってください’というようなメッセージが伝わってくるような気がしたのです。
キャリアの長い空気公団のライブは、とても安定しており、良い音楽を景色を感じながら楽しみたいという心を、安心してゆだねられるものでした。
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最後に
空気公団の出演する時間帯、実はうとうとと眠り始めた観客も少なくありませんでした。
おそらく3日連続で訪れている人達なのでしょう。
それは、出演者が可哀想だとか、チケット代がもったいないというような光景ではありませんでした。
このときのフェスだけでなく、日々の疲れなどが生演奏でほどけていくという、とても贅沢な時間を体験している人々もいるのだなぁと考えさせられるものでした。
空気公団の演奏は筆者に、3DAYSの野外フェスだから味わえる音楽の楽しみ方を教えてくれたのでした。