実兄弟である堀込泰行と堀込高樹が結成したユニット、KIRINJI(キリンジ)。
その中で最も注目され、カバーされることで歌い継がれている楽曲が、彼らの一番の代表曲とも言える「エイリアンズ」です。
何故この「エイリアンズ」は、こうも数多くのミュージシャンやアーティスト、また音楽クリエイターらを魅了し、この曲を聴く私達の心を捉えて離さないのでしょう?
そして、難解に聴こえるこの「エイリアンズ」の歌詞に秘められる意味は一体何なのでしょうか?
今回は、様々なアーティストにカバーされている「エイリアンズ」を紹介すると共に、「エイリアンズ」の歌詞の謎と魅力に迫っていきたいと思います。
エイリアンズとはどんな曲なのか
1996年、堀込泰行、堀込高樹の実兄弟ユニット、KIRINJI(キリンジ)は結成されました。
そして彼らは1997年にインディーズデビュー。
翌年1998年にはメジャーデビューを果たしました。
2013年の弟の堀込泰行の脱退を経て、現在の新しいKIRINJIに至るまで、彼ら掘込兄弟の作る名曲・代表曲は数多くあります。
その中で、燦然と輝くヒット曲の一つが2000年に発表された「エイリアンズ」なのです。
でははじめに、キリンジの「エイリアンズ」を聞いてみましょう。
「エイリアンズ」はこのプロモのように、淋しげな二人ぼっちの世界観が幻想的に奏でられているような楽曲です。
何と言っても、イントロの物悲しいギターのメロディが印象的であります。
サビの部分では、一気に主旋律のキーが上がり、美しいファルセットで歌われていきます。
そしてそのサビの部分にかかるコーラスが、主旋律のほぼワンオクターブ下を歌っていることで、重なり合った二人の人物の姿を見事に表現しているようなのです。
様々なアーティストに歌われるエイリアンズ
それではここで、様々なアーティストがカバーし、姿を変えているカバーされた「エイリアンズ」について紹介したいと思います。
秦基博のカバー
「エイリアンズ」
まずは、秦基博が歌う「エイリアンズ」の紹介です。
これは「エイリアンズ」のカバーの中でも、筆者が最も好きなバージョンです。
マイナー調のボサノヴァでアレンジされており、そのアレンジに伸びやかで力強い歌声がとてもマッチしています。
キリンジの「エイリアンズ」とは違った、アダルティーな世界観が表現されていますね。
ORIGINAL LOVEカバー
「エイリアンズ」
次に、ORIGINAL LOVEが歌う「エイリアンズ」の紹介です。
演奏はキリンジの「エイリアンズ」とほとんど変わりませんが、原曲とはかなり違う、独特の歌いまわしです。
少しクセを感じるので好みが別れそうですが、キリンジの「エイリアンズ」の世界観を壊さないようなカバーは、キリンジファンも好感が持てるのではないでしょうか。
「エイリアンズ」
LOVERSバージョン
最後に、「エイリアンズ」の作詞作曲者本人である堀込泰行がアレンジした「エイリアンズ」の紹介です。
2017年に「エイリアンズ LOVERSバージョン」として発売されました。
キリンジの「エイリアンズ」よりも、宇宙的な雰囲気を感じます。
オルタナティブですね。
イントロとなっていた印象的なギターのフレーズは間奏のみで聴けるという、お洒落な構成となっています。
エイリアンズの歌詞の謎に迫る
さて、気になる「エイリアンズ」の歌詞の世界について考察してみようと思います。
キリンジの「エイリアンズ」を語るにおいて、よく「男女の世界を見事に描いてある」というような評価や、「もしかして殺人がテーマなの…?」などと囁かれることがありますが、果たしてそうなのでしょうか?
私には気になって仕方がない部分があります。
それは、歌の主人公は自分のことを「僕」と呼び、そして、語りかける相手のことを「ダーリン」と呼んでいるところです。
楽曲に登場する二人の関係が男女なのであれば、語りかける相手は「ダーリン」ではなく、「ハニー」なのではないでしょうか?
実はこの「エイリアンズ」、昔からのファンの間では同性愛を歌った楽曲としても愛されているのです。
もちろん歌詞というものは抽象的であり、そこにリスナーが意味の正解などは見つけられないものなので、どちらが正しい解釈かを決めることは出来ません。
タイトルにもなっている「エイリアンズ」についても考えてみましょう。
なぜ『「僕ら」は「エイリアンズ」』という、否定的な表現で自らを呼んでいるのでしょうか。
そこで私は、『あまり公では言えない関係の比喩として「エイリアンズ」と呼んでいるのではないか』と考えました。
もしも、「同性愛の歌詞」という目線で「エイリアンズ」を聴いたことがない場合には、是非一度、このような解釈で聴いてみてください。
「禁断の果実」「月の裏」「新世界」などといった言葉の意味も、少し違って聞こえてきます。
まとめ
それにしても作詞作曲者の本人である堀込泰行が、自らニューバージョンの「エイリアンズ」を発表するなんて、彼自身が「エイリアンズ」には特別な思い入れを持っていることが窺えます。
堀込泰行のソロプロジェクト・馬の骨のインタビューで、「馬の骨」の名前の由来について、『自分自身を世の中的に見て、どちらかといえば悪い意味で呼んでいる海外のバンドなんかが好きで…』と語っています。
この発言を踏まえると、「エイリアンズ」の一番最後の歌詞に「大好きさエイリアンズ」とありますが、これは堀込泰行自身の、エイリアンズという言葉と同じような、世の中からあまり良い意味ではないとされてしまう物への愛を表現しているかのようです。
そして実は、多くの人々が本当に好むものとは案外、世の中的には良いものとされていないようなテーマだったりするのかもしれません。
私はそこに、「エイリアンズ」が大切に歌い継がれている理由を感じるような気がします。
特にミュージシャンやアーティストは、自分自身が傑作だと信じて発表する作品も、世の中ではあまりよく思われないというような苦悩も抱えるのではないでしょうか。
そのような心理に、「エイリアンズ」は特に深く響くということが、様々なミュージシャンやアーティストに支持される理由なのではないかと思うのです。