2018年、高視聴率をマークしたNHKの人気雑学バラエティ番組「チコちゃんに叱られる」。
「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」
と、正解を出せない大人に喝を入れる5才児チコちゃん。
この毒舌は2018年の流行語大賞にノミネートされ、そしてなんとチコちゃん本人は2018年紅白歌合戦に初出場を果たしました。
芸人・木村祐一さんが声優を務めるその毒舌キャラですが、コロコロと表情が変わる愛くるしい顔は、一体どうやって撮影してるのか、沢山の視聴者から疑問に思う声がNHKに寄せられています。
今回はその疑問に答えるべく、チコちゃんの顔の「NHKの最新CG技術」を駆使した撮影の手法を分かりやすく説明したいと思います。
チコちゃんの顔はCG加工されている
番組MCの岡村隆史さんがチコちゃんに実際に触っていることから、チコちゃんはそこに本当に存在しているであろうことは予測できます。
でも普通は着ぐるみだと表情はほとんど変わりませんよね。
どうやって撮影しているのか?
実際は、チコちゃんの顔はCG(コンピュータグラフィック)アニメのような作りになっているので、表情豊かに喋り、時には頭の大きさまで変化しちゃいます。
CGなのに本当にその場にいるかのようにリアルにチコちゃんの顔が映っているのが、まあなんとも驚きです。
収録時のチコちゃん頭部は着ぐるみ
チコちゃんの顔は、収録時には普通の着ぐるみと同じように表情の動きはありません。
どんな顔になっているのかは秘密で公開されていませんが、なんとも興味深いです。
(巷では、CGアニメを当てやすいように、のっぺらぼうじゃないか、とも言われていますが。。^^;)
なので、収録中は岡村さんや共演者の方は普通の着ぐるみとお話している、ということです。
チコちゃんの顔の仕組みとCG加工の流れ
では番組収録後、どのような技術が使われてチコちゃんのCGの顔ができているのかを紹介します
工程は5つです。
チコちゃんの顔ができるまで
- 頭の動きを作る(トラッキング)
- 表情を作る(フェイシャルアニメーション)
- 立体的色や影をつける(レンダリング)
- 不自然な部分を隠す(マスク処理)
- 頭部と胴体を自然に合成(コンポジット)
チコちゃんの頭の動きを作る
頭の動きを作るこの工程は、トラッキングと呼ばれます。
実物の着ぐるみのチコちゃんの頭部を3Dスキャンし、そのデータを基に、収録した映像からチコちゃんの顔の位置がどこなのか追っていきます。
簡単に言うと、「チコちゃんの頭はこういう風に動いていたよー」というのをコンピュータにわかってもらう処理がトラッキングです。
チコちゃんの顔の表情を作る
顔の表情を作るこの工程は、フェイシャルアニメーションと呼ばれます。
さきほどのトラッキングによりチコちゃんの顔の位置がわかったので、それに表情を加えてあげます。
番組中のチコちゃんのリアルな表情の動きは、「ニヤリ」「怒る」「焦る」「うふ」などの様々な喜怒哀楽の表情パターンが、あらかじめかなりの数で作成されています。
そしてCG加工する際に、岡村さんや共演者の方の掛け合いを踏まえた上、台詞に合わせてその表情パターンの中からしっくりくるものを選んではめ込んでいるとのこと。
そしてさらに眉毛、目、口の動きを細かく調整していきます。
これによってCGでありながら、まるで本物の人間のようにリアルに表情を変えることができているわけです。
チコちゃんの顔に立体的な色や影をつける
顔に凹凸のある、立体的な色や影をつけるこの工程は、レンダリングと呼ばれます。
ここでは、光の位置や方向から目に映る光や顔の影をつける処理を指します。
最上部の岡村と抱き合っているチコちゃんの瞳は、レンダリングによって光が映り込んでいるように処理をされ、より目が立体的になったことがわかると思います。
不自然にみえる部分を隠す
不自然にみえる部分を隠すこの工程は、マスク処理と呼ばれます。
なぜ、不自然にみえる部分ができてしまうのか?
それは、最初の段階のトラッキングでも、正確にチコちゃんの顔を捉えられない場合があるからです。
画像のように、収録で使われているチコちゃんの着ぐるみの頭部によって肩の上端が隠れてしまったりします。
こういった不自然に処理されてしまった箇所を隠すことで、自然な見栄えにします。
チコちゃんの頭部と胴体を自然な感じに合成する
頭部と胴体を自然に合成するこの工程は、コンポジットと呼ばれます。
このコンポジット処理によって、影が合成されます。
こちらがコンポジット前の画像 ↓
コンポジット後 ↓
こちらの2枚の画像をよーく見比べてみると、コンポジット後の画像には「顔に薄っすらと腕の影が入っている」ことがわかりますね。
わずかな差ではありますが、コンポジット後の方が自然ですね。
これにて、チコちゃんの顔が完成というわけです。
『チコちゃんに叱られる』の1回の放送で制作時間は、、
そしてこのCG加工作業はNHKアートスタッフや外部の協力会社のスタッフらが担当していて、1班7人の3班体制(総勢21人!)にも及ぶ大人数で制作されています。
しかも驚きなのは、1回45分番組のチコちゃんの表情を加工するのに3週間もの時間がかかっているということ!
これはかなり緻密な作業になりますね。
チコちゃんのリアルな表情は裏でこんな涙ぐましい労力の元作られていたわけです。
まとめ
以上、5つの工程を踏んでチコちゃんの顔は出来上がり、『チコちゃんに叱られる!』は放送されているわけです。
番組をみると、岡村さんとの掛け合いに、まるでその場で動いているかのようなチコちゃんのリアルな表情が、なんとも小憎らしく可愛いのでつい見入ってしまいます。
あれだけリアルな顔の裏には、これだけの細かな処理が施されているというのは納得です。
これからチコちゃんの進化はまだまだ続き、いずれはリアルタイムにも対応する予定とのこと。
その場でクルクルと表情を変えるチコちゃんを、生放送番組でみられる日が来るかもしれませんね。